世界一流エンジニアの思考法

現場で効く“思考力”とは?――『世界一流エンジニアの思考法』要約レビュー

はじめに

エンジニアとして、ただコードを書くだけでは通用しない時代が来ています。成果を出す人とそうでない人の違いは、思考の“質”にあります。牛尾剛さんの『世界一流エンジニアの思考法』は、まさにその「思考力」を高めるためのエッセンスが詰まった一冊です。

筆者自身も開発現場で苦い失敗を経験し、この本に出会ったことで「考え方を変える」ことの価値に気づきました。ここでは、特に印象的だった第1章〜第3章を要約しつつ、自分の経験や気づきも交えてお届けします。


第1章 世界一流エンジニアは何が違うのだろう?

「試行錯誤」は悪である

若手の頃、私はよく「とにかくやってみる」タイプでした。動けば正解、止まれば調べる。そんなやり方で何とかやり過ごしてきたのですが、本書を読んで「それでは成長しない」と痛感しました。

思いつきよりも、仮説と検証をセットにする習慣が大切

手を動かす前に、一度立ち止まって「この現象はなぜ起きているのか?」を仮説立てる。その積み重ねが、長い目で見てエンジニアとしての“地頭”を鍛えてくれます。

インプットに時間をかける

最初の理解に時間をかけるのは一見非効率ですが、それが後から大きなリターンをもたらします。どんなに頭の良い人でも、最初は基礎でつまずいているのです。

「基礎ほど時間をかけろ」。これは筆者の中で、名言として残りました。

理解の3要素

  • 即座に取り出せる(=実務で活かせる)
  • 応用が効く(=文脈を変えても使える)
  • 人に説明できる(=本当に理解している)

💡 図解:理解の3要素

要素説明
即時再現性状況を問わず使える
応用力新たな場面でも応用可能
説明力他者へ伝えられるレベルの整理

思考の整理術

コードを書く前にドキュメントを書くのは面倒かもしれません。しかし、それによって自分の頭の中が明確になり、ミスの防止にもつながります。特に設計段階では「書きながら考える」ことが、質の高い成果物を生み出します。

また、メンタルモデルを作るという考え方も非常に実践的です。システム全体を上空から俯瞰するようなイメージで、自分の作業の位置づけを理解すると、作業効率が格段に上がります。

エキスパートに聞く

「2時間悩んだら、すぐ聞け」。これは今でも私がチームに伝えている合言葉です。悩んでいる間にもコストは発生しています。相談することは恥ずかしいことではなく、むしろ最もスマートな行動です。

自己効力感を持つ

問題が起きたとき、「自分なら何とかできる」と思える力こそが、プロとしての土台になります。やり切った経験がある人ほど、この力が強い。日々の小さな成功体験の積み重ねが、自信に変わっていくのだと思います。


第2章 アメリカで見つけたマインドセット

Be Lazy:やらない勇気

「怠け者であれ」というメッセージは、最初は意外でした。でも読んでいくうちに「なるほど」と腹落ちします。

重要なのは、やらないことを決める勇気です。すべてを完璧にこなそうとすると、自分もチームも潰れてしまう。優先順位を明確にして、一番効果のある行動に集中する――それが一流の選択です。

🧠 図解:Be Lazyの行動原則

  • 優先順位をつける
  • 無駄な作業はやらない
  • 会議も時間内で完了させる

Fail Fast:まず動け

「検討」より「検証」。これは私が最も好きなフレーズの一つです。完璧な計画を練っている間に、現実はどんどん動いていく。

まず動いてみて、結果を観察し、必要に応じて方向転換する。スピードと柔軟性を両立するための最善の思考法だと思います。

💥 やってみてから考える。早く失敗して、早く修正する

仕事の進め方を自分で設計する

「がんばる」ではなく「設計する」。これは、働き方そのものをアップデートする考え方です。

自分が無理をすると、周りにも無理を強いることになります。だからこそ、自分の作業量・時間・ペースを設計する。そこにこそ、プロフェッショナルとしての責任があるのだと感じました。


第3章 脳に余裕を生む情報整理・記憶術

脳のリソースを節約する

エンジニアのリソースは、時間ではなく“脳のバッテリー”だと思っています。無駄に悩んだり、複雑なコードを何度も読むのは、それを激しく消耗します。

本書では「コードを読まない工夫をする」とありますが、これはコードを読まないという意味ではなく、“意図して読む”こと。インターフェースや構造を先に押さえれば、読む量は自然と減ります。

「アウトカム主義」が落とし穴

短期的なアウトカムにこだわるあまり、土台となるスキル習得をおろそかにしてしまうことがあります。

🚀 短期成果より、長期スキルが未来の生産性をつくる

これは筆者が最も反省した点でもあります。評価される成果を出すことも大事ですが、それ以上に「成長する設計」を自分に課すことが大切です。

マルチタスクはやめよう

WIP=1(同時並行は1つ)。これはシンプルですが、とても難しいです。特にSlackやメールに追われる日々では、つい色んなことに手を出してしまいます。

集中時間を作るために、通知をオフにする、ブラウザのタブを閉じる、1日4時間は「誰にも邪魔されない時間」を取るなど、意識的な対策が必要です。

記憶の本質は“構造理解”

「覚えていない」は、「理解できていない」の裏返しです。

自分の言葉で説明できるか?それが理解の証です。何かを学んだときは、自分の頭の中で一度構造化し、それを言葉にしてみると、驚くほど記憶に定着します。

頭の中で整理する習慣

ミーティングの議事録をその場で書かない、人に説明するつもりで話を聞く、頭の中で構造ができてから書く。これらは、すべて「思考の筋トレ」です。

最初は慣れないかもしれませんが、確実に思考力と記憶力が鍛えられます。

アウトプットの質は、インプット時の思考設計で決まる


おわりに

技術を磨くのは大事。でも、それ以上に大事なのは「思考の型」を身につけること。仮説思考、やらない選択、脳の省エネ術――どれも、明日から実践できるものばかりです。

ぜひ一つでも、あなたの仕事の中に取り入れてみてください。行動が変われば、成果が変わり、いつの間にか「自分ならやれる」という感覚が育っていくはずです。


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